こんばんは、緑青です。
さて、改めまして、先日申しておりました詩の発表会、後編にいきたいと思います。
今回の掲載も12編。一作を除いて昨年10月以降のものです。
順序的には二部構成みたいになってます。
あまりにも闇々しているので深夜推奨。解説も淡々とさせてみました。
それでは、「本体」からお読みくださいな。
さて、改めまして、先日申しておりました詩の発表会、後編にいきたいと思います。
今回の掲載も12編。一作を除いて昨年10月以降のものです。
順序的には二部構成みたいになってます。
あまりにも闇々しているので深夜推奨。解説も淡々とさせてみました。
それでは、「本体」からお読みくださいな。
◆◆◆
1.「おかえり文学」
砂の山から砂粒を拾うような感じだ
きっとどれも正解で、それでいて僕の欲しいものじゃない
共感者は共感だけして理解者にはならない
此方側の拒めない立場を利用して目尻を下げている
誰のためにそんなに従順なんだ
線が一本引いてあるだけじゃないか
乗り越えてごらん
僕の腕の届くところまで
君は最高の共犯者だ
単に僕も同じだけだよ、決して責めてるわけじゃない
満足できないな
理想が高すぎるのかな
◆◆◆
2.人だらけ
他人の歌を橋の上で歌う
他人の歌はよく響く
自分の脳は自分を充たす言葉を生み出せず
自分の口は自分を満足させる歌を歌えず
自分の手は自分で納得いく絵を描けず
自分の足は暴走
だからもっと感じさせて
あなたはどこまでも他人
どこまでもどこまでもどこまで行っても他人だから
きっと私をシアワセにしてくれる筈
手に負える規模の合致で充分
引っ掛かりすぎると引き裂かれるからね
出鱈目のリンク 表面を翔ける愛想
まさか何が欲しかったのか忘れてないよね?
私はひとつ
パーツの一つ
大多数に埋もれながら
君に残る可能性をうっすらと希(ネガ)う
結果は知らない
…行く末など見える筈も無く……
他人の歌を橋の上で歌う
他人の歌は自分の声じゃないみたいによく響き
イイ感じで見えなくなってゆく
◆◆◆
3.近似
詩集を読んだときに
誰もが感じたことがあるはず
「この一文 私が書いたものと似ている」
この感じには
陶酔が混じっている
詩集には商業的価値がある
大なり小なり世間的価値もある
詩人は有能者に見える
その力量にかすった言葉に
自分の力量の虚像が映る
生まれてきた順番の所為にして
慰みという形で自分にポイントが加算される
そんな妄想の中で飼われているから
詩人は詩人
だって居やしないじゃないかそんな人間
あるのは枠組
見世物はいつだって美しい
自分の眼球からじゃ自分は見えないから
目の前にある物を自分だと思い込むの
そして言う
言うと高慢になるから、という偽善者は心の中で想う
「私 も 素晴らしい」
◆◆◆
4.被写体
欲が出てくると
どう見られたいのかというハードルが上がってくる
足場になりそうなものは何でも積んで
自分の中から湧く欲望に答えることに必死になる
そしてそれが高ければ高いほど
崩れたとき 叩きつけられたときの衝撃は大きい
何ならもう 息さえしていない程に
◆◆◆
5.食糧難時代
中毒も鬱憤も
吐き出した後の
後悔が激しいから
もやもやと蓄積している
その所為で死にたいとは思わない
◆◆◆
6.甘える
自分は誉められたくて仕方ないのに
他人を誉めることができない
正確には世辞が言えない
自分は世辞で簡単に浮かれているのに
自分のことしかわからない
他人のことがわからない
何がしたいの?
ちゃんと言いなよ
不満げな顔だけしてさ
私のことをきちんと理解してから求めてきてくれないかな?
君は私よりも優秀なんだから
◆◆◆
7.無責任感
何をするもいいんだよ
掴んだ結果は君だけのものなんだ
過程も大事
後悔のない様にね
努力は生涯君の財産になる
パワーはすでに君の中に
お金で買えない物がある
叶わない願いはない
君には受け取る権利がある
前だけ向いて風を切れ
夢を失くした棄権者達が
括られた沿道のロープの外から 若い君たちに送る言葉
◆◆◆
8.white out
浸るべき世界を
疑い始めて
相手の悪さに気付く
忘れていた自分の小ささ
届かない手
動かない足
響かない声
ツカエナイ存在(モノ)
泣いても遅い
いつ泣けば早い?
迷路ならまだ良い
道になっているだけ
時間と言う概念だけあって
この闇(クウカン)に秒針の音は無く
黒を白と名付けて、自分が消えないようにして
目を伏せながら抱いてくれる腕と光を求めている
◆◆◆
9.溺愛
抱きしめられると 暑苦しくなる
昔は愛おしかった熱(たいおん)が 今は邪魔だ
毛布の中なら息ができる
暖炉の前なら寝返りがうてる
でも君の腕の中では狭く限られて
時折声が出せない
それでも君は抱きしめる
暇さえあれば求めてくる
猫撫で声の ム邪気な笑顔で
その都度編み物をやめ 絵本を閉じ コーヒーを置いて
君と隙間だらけの一つになる
今嫌な顔をしたら君はどんな顔をするかしら?
その解釈が正解でも誤答でも罰は私に来るのかしら
…きっとくる 間違いなくくる
だから黙って抱かれている
日増しに強まる力を感じながら
…ひとつ例え話をしましょう
抱きしめた結果 締め殺したとして
君は笑っているのかしら
どれだけやっても無駄な 温め甲斐のある亡骸(カラダ)
それでも抱きしめ続けるのかしら
胸に顔を埋めるのは香りを慈しみたいんじゃない
おしゃべりな表情を 必死に隠しているだけ
何も知らない君の腕が髪を撫ぜた
何も知りたくない君が流れ込んできた
◆◆◆
10.追う
街の中で迷子になった きみを探そう
おにごっこの途中で 横断歩道の意地悪に巻き込まれて
ぼくの見えるところから いなくなったきみを
広い街 入り組んだ路地 固い柱
すべてがきみを隠してる
ひとりぼっちのぼくを見下ろして 笑っている
ひとりぼっちのぼくを 冷たく突き放している
だから風にお願いをしたんだ ぼくを大きくしてと
何よりも高くなって あのこをつかまえるんだ
ぼくの足元に集まる風が 渦を巻いて
ぼくを高く高く 空に伸びる柱にしてくれた
よく考えてみてよ 最初にズルしたのはきみでしょ?
小さなからだで 人波に飛び込んだりして
だからぼくも ずるっこするよ
許してくれるね? きみはやさしいから
ぼくは大きくなったよ きみを探す
ちょっとごうごうとうるさいけど 風も四方を見てくれる
きみはどこかな? さあ歩きだすよ
風はいろんなものを拾い集めて ぼくに見せてくれる
看板も 自動販売機も スーツのおじさんも 茶色の猫も
ちがうよ ぼくが探してるのはあのこだ
ちがうよ 元の場所に捨てておいで
風は間違ったものばかりを持ってくる
次々に見せようとするんだ
ちがうものばっかりで邪魔だよ
ぼくが探してるのはあのこだ
捨てて捨てて そんな物
捨てて捨てて そんな者
捨てて捨てて そんな物
捨てて捨てて そんな者・・・
すっかり街はひろくなり ぼくもこんなに大きいのに
やっぱりきみは見つからない そんなに足が速かったっけ
太陽も帰る ぼくもかえるよ
続きは明日 またこの街で
風にさよなら 明日もよろしく
がれきを踏んで けがしないように
帰りぎわにあのこを見つけたら きっと教えてね
すぐにでも ぼくは追いかけるから
◆◆◆
11.下りてこない
11時のニュースで流星群のことを知り
彼と私は願いのためにベランダへ
おおかた乾いた洗濯物を部屋の中に投げ込み
ふたりで広くなった空を見上げる
でも外には斑らな雲
厚さのない空の隙間からでは闇しか望めない
部屋の中からはアナウンサーが東日本以外では見づらいと言っている
そんな時 彼が言ったの
僕にいい考えがあるんだ
彼はテレビの上に飾ってあった
英国土産のボトルシップを持ってきてそのまま下階に投げつけた
透明な瓶はコンクリートの地面に叩きつけられて砕けた
すると中にいた船は途端に脇の軽自動車ほどに大きくなり
彼はその船に乗り込んだ
これに乗って雲を片付けてくるよ
そう言って私の目線にまで浮かび上がる船
私が大丈夫なの、と尋ねると
何なら流れ星を取ってきてあげるよ
といつもの悪戯な笑みでそのまま浮かび上がっていった
硝子の破片をまきながら
暗い空を航ぐ(およぐ)木の船
星の波を引き連れて
だんだんと点になっていく彼
私は手を振ってみたけど
彼が応じているかはわからなかった
それから彼は下りてこない
一週 一月 四半年
待てども待てども下りてこない
星しかない空 雲しかない空 月しかない空 水しかない空
どれも彼を吐き出さない
彼の名前を読んでみても
空に吸い込まれ霧散する
テレビは彼を探さない
人の不倫と粉まみれの男
虹のパズルを繰り返し映すだけで
また笑顔で朝を告げる
画面右隅の時刻に追われて会社に行くわ
でも安心して
彼を見つけるのは私よ テレビじゃない
違う流星群が巡ってきても
その中に彼はいない
彼は私に笑わない
次の60年なんて待てない
でも次の夜なら何とか待てる
だから寂しくても空を見上げてる
彼を見つけるのは私よ 周期じゃない
首が痛いなんて言わない
飽きたなんて言わない
彼もきっと私を探しているわ
眼が辛いだなんて言わずに
息ができないなんて言わずに
彼を見つけるのは私よ わたしなのよ…
そうして空を見続けていたら
分かってきたことがあるの
きっと彼は流れ星になったのよ
一瞬だから笑顔も見えないだけなのよ
いつしか彼自身が願いになって
私の前をいくつも翔って(はしって)いく
小さすぎて私の願いは叶わないの
彼も小さすぎて私の願いを叶えられないの
もう彼は下りてこない
下りてきたなら私を殺す
だけど寂しがりやな彼だから
私は無言で空を見ているの
もう望まない
願いすぎて薄くなった願い
言葉にしようとしても
冬にしか色が付かないから
もう彼は下りてこない
知っているけど祈っているわ
悪戯な彼が悪戯に迷い込むように
ベランダから夜空を見つめながら
◆◆◆
12.『誰が為に鐘は鳴る』
鳩と紙吹雪と歓声が舞う街の
高い塔から降り注ぐ澄んだ音
後ろから二番目でずっと着いていった私にも
そのオコボレは美しく響いた
この旅が終わった瞬間
きっと私はただの一市民に戻るのだと思った
どこかで安心していた
崖も怒号も返り血も
全てが永遠に過去に流れて
二度と巡ってこない日々が手に入ったのだと
戦いの日々の中
皆は私を役立たずと罵る事無く
ジェラに至っては指を2本失いながら私を守ってくれた
剣先が絶えず震えていても
いつも一歩出遅れるとしても
勝利の後の炎の前で
グラスに美酒を注いでくれた
本当の英雄達よりも
私の体は奇麗だ
どうして皆は笑ってくれるのだろう
どうしてその心の裏には澱みが映らないのだろう
鐘の音に足を縛られて動けない私を見て
ジェラが何を泣いているんだと聞いた
カインが感動でもしているんだろうと茶化した
ミリアがハンカチーフで私の目元を拭い
リーガルは大きな手で私の頭をぽんぽんと叩き
よく頑張ったな、と小さく言った
逃げ出したいのに
この場所が温かくて離れられない
気持ち良さそうに揺れる鐘
心を揺する響きが苦しくて
結局私は
その場に塞ぎこみ
今までのように4人の影に隠れて声も上げず泣いた
鐘の音がたくさんの隙間を縫いながら
いつまでもいつまでも染み込んできた
◆◆◆
あとがきにかえまして。
就活の時も油断はなりません。何が舞い降りてくるか分からない。
今回のは思い入れの強い詩が多いです。その意味では、今回は大満足でした。が、いろんな意味でまだまだです。
んじゃ、二度目のリセットをして、次の言葉が生まれてくるのを待ちます、なんて言えば少しは格好イイのかなぁ?
ぐっない!!
1.「おかえり文学」
砂の山から砂粒を拾うような感じだ
きっとどれも正解で、それでいて僕の欲しいものじゃない
共感者は共感だけして理解者にはならない
此方側の拒めない立場を利用して目尻を下げている
誰のためにそんなに従順なんだ
線が一本引いてあるだけじゃないか
乗り越えてごらん
僕の腕の届くところまで
君は最高の共犯者だ
単に僕も同じだけだよ、決して責めてるわけじゃない
満足できないな
理想が高すぎるのかな
◆◆◆
2.人だらけ
他人の歌を橋の上で歌う
他人の歌はよく響く
自分の脳は自分を充たす言葉を生み出せず
自分の口は自分を満足させる歌を歌えず
自分の手は自分で納得いく絵を描けず
自分の足は暴走
だからもっと感じさせて
あなたはどこまでも他人
どこまでもどこまでもどこまで行っても他人だから
きっと私をシアワセにしてくれる筈
手に負える規模の合致で充分
引っ掛かりすぎると引き裂かれるからね
出鱈目のリンク 表面を翔ける愛想
まさか何が欲しかったのか忘れてないよね?
私はひとつ
パーツの一つ
大多数に埋もれながら
君に残る可能性をうっすらと希(ネガ)う
結果は知らない
…行く末など見える筈も無く……
他人の歌を橋の上で歌う
他人の歌は自分の声じゃないみたいによく響き
イイ感じで見えなくなってゆく
◆◆◆
3.近似
詩集を読んだときに
誰もが感じたことがあるはず
「この一文 私が書いたものと似ている」
この感じには
陶酔が混じっている
詩集には商業的価値がある
大なり小なり世間的価値もある
詩人は有能者に見える
その力量にかすった言葉に
自分の力量の虚像が映る
生まれてきた順番の所為にして
慰みという形で自分にポイントが加算される
そんな妄想の中で飼われているから
詩人は詩人
だって居やしないじゃないかそんな人間
あるのは枠組
見世物はいつだって美しい
自分の眼球からじゃ自分は見えないから
目の前にある物を自分だと思い込むの
そして言う
言うと高慢になるから、という偽善者は心の中で想う
「私 も 素晴らしい」
◆◆◆
4.被写体
欲が出てくると
どう見られたいのかというハードルが上がってくる
足場になりそうなものは何でも積んで
自分の中から湧く欲望に答えることに必死になる
そしてそれが高ければ高いほど
崩れたとき 叩きつけられたときの衝撃は大きい
何ならもう 息さえしていない程に
◆◆◆
5.食糧難時代
中毒も鬱憤も
吐き出した後の
後悔が激しいから
もやもやと蓄積している
その所為で死にたいとは思わない
◆◆◆
6.甘える
自分は誉められたくて仕方ないのに
他人を誉めることができない
正確には世辞が言えない
自分は世辞で簡単に浮かれているのに
自分のことしかわからない
他人のことがわからない
何がしたいの?
ちゃんと言いなよ
不満げな顔だけしてさ
私のことをきちんと理解してから求めてきてくれないかな?
君は私よりも優秀なんだから
◆◆◆
7.無責任感
何をするもいいんだよ
掴んだ結果は君だけのものなんだ
過程も大事
後悔のない様にね
努力は生涯君の財産になる
パワーはすでに君の中に
お金で買えない物がある
叶わない願いはない
君には受け取る権利がある
前だけ向いて風を切れ
夢を失くした棄権者達が
括られた沿道のロープの外から 若い君たちに送る言葉
◆◆◆
8.white out
浸るべき世界を
疑い始めて
相手の悪さに気付く
忘れていた自分の小ささ
届かない手
動かない足
響かない声
ツカエナイ存在(モノ)
泣いても遅い
いつ泣けば早い?
迷路ならまだ良い
道になっているだけ
時間と言う概念だけあって
この闇(クウカン)に秒針の音は無く
黒を白と名付けて、自分が消えないようにして
目を伏せながら抱いてくれる腕と光を求めている
◆◆◆
9.溺愛
抱きしめられると 暑苦しくなる
昔は愛おしかった熱(たいおん)が 今は邪魔だ
毛布の中なら息ができる
暖炉の前なら寝返りがうてる
でも君の腕の中では狭く限られて
時折声が出せない
それでも君は抱きしめる
暇さえあれば求めてくる
猫撫で声の ム邪気な笑顔で
その都度編み物をやめ 絵本を閉じ コーヒーを置いて
君と隙間だらけの一つになる
今嫌な顔をしたら君はどんな顔をするかしら?
その解釈が正解でも誤答でも罰は私に来るのかしら
…きっとくる 間違いなくくる
だから黙って抱かれている
日増しに強まる力を感じながら
…ひとつ例え話をしましょう
抱きしめた結果 締め殺したとして
君は笑っているのかしら
どれだけやっても無駄な 温め甲斐のある亡骸(カラダ)
それでも抱きしめ続けるのかしら
胸に顔を埋めるのは香りを慈しみたいんじゃない
おしゃべりな表情を 必死に隠しているだけ
何も知らない君の腕が髪を撫ぜた
何も知りたくない君が流れ込んできた
◆◆◆
10.追う
街の中で迷子になった きみを探そう
おにごっこの途中で 横断歩道の意地悪に巻き込まれて
ぼくの見えるところから いなくなったきみを
広い街 入り組んだ路地 固い柱
すべてがきみを隠してる
ひとりぼっちのぼくを見下ろして 笑っている
ひとりぼっちのぼくを 冷たく突き放している
だから風にお願いをしたんだ ぼくを大きくしてと
何よりも高くなって あのこをつかまえるんだ
ぼくの足元に集まる風が 渦を巻いて
ぼくを高く高く 空に伸びる柱にしてくれた
よく考えてみてよ 最初にズルしたのはきみでしょ?
小さなからだで 人波に飛び込んだりして
だからぼくも ずるっこするよ
許してくれるね? きみはやさしいから
ぼくは大きくなったよ きみを探す
ちょっとごうごうとうるさいけど 風も四方を見てくれる
きみはどこかな? さあ歩きだすよ
風はいろんなものを拾い集めて ぼくに見せてくれる
看板も 自動販売機も スーツのおじさんも 茶色の猫も
ちがうよ ぼくが探してるのはあのこだ
ちがうよ 元の場所に捨てておいで
風は間違ったものばかりを持ってくる
次々に見せようとするんだ
ちがうものばっかりで邪魔だよ
ぼくが探してるのはあのこだ
捨てて捨てて そんな物
捨てて捨てて そんな者
捨てて捨てて そんな物
捨てて捨てて そんな者・・・
すっかり街はひろくなり ぼくもこんなに大きいのに
やっぱりきみは見つからない そんなに足が速かったっけ
太陽も帰る ぼくもかえるよ
続きは明日 またこの街で
風にさよなら 明日もよろしく
がれきを踏んで けがしないように
帰りぎわにあのこを見つけたら きっと教えてね
すぐにでも ぼくは追いかけるから
◆◆◆
11.下りてこない
11時のニュースで流星群のことを知り
彼と私は願いのためにベランダへ
おおかた乾いた洗濯物を部屋の中に投げ込み
ふたりで広くなった空を見上げる
でも外には斑らな雲
厚さのない空の隙間からでは闇しか望めない
部屋の中からはアナウンサーが東日本以外では見づらいと言っている
そんな時 彼が言ったの
僕にいい考えがあるんだ
彼はテレビの上に飾ってあった
英国土産のボトルシップを持ってきてそのまま下階に投げつけた
透明な瓶はコンクリートの地面に叩きつけられて砕けた
すると中にいた船は途端に脇の軽自動車ほどに大きくなり
彼はその船に乗り込んだ
これに乗って雲を片付けてくるよ
そう言って私の目線にまで浮かび上がる船
私が大丈夫なの、と尋ねると
何なら流れ星を取ってきてあげるよ
といつもの悪戯な笑みでそのまま浮かび上がっていった
硝子の破片をまきながら
暗い空を航ぐ(およぐ)木の船
星の波を引き連れて
だんだんと点になっていく彼
私は手を振ってみたけど
彼が応じているかはわからなかった
それから彼は下りてこない
一週 一月 四半年
待てども待てども下りてこない
星しかない空 雲しかない空 月しかない空 水しかない空
どれも彼を吐き出さない
彼の名前を読んでみても
空に吸い込まれ霧散する
テレビは彼を探さない
人の不倫と粉まみれの男
虹のパズルを繰り返し映すだけで
また笑顔で朝を告げる
画面右隅の時刻に追われて会社に行くわ
でも安心して
彼を見つけるのは私よ テレビじゃない
違う流星群が巡ってきても
その中に彼はいない
彼は私に笑わない
次の60年なんて待てない
でも次の夜なら何とか待てる
だから寂しくても空を見上げてる
彼を見つけるのは私よ 周期じゃない
首が痛いなんて言わない
飽きたなんて言わない
彼もきっと私を探しているわ
眼が辛いだなんて言わずに
息ができないなんて言わずに
彼を見つけるのは私よ わたしなのよ…
そうして空を見続けていたら
分かってきたことがあるの
きっと彼は流れ星になったのよ
一瞬だから笑顔も見えないだけなのよ
いつしか彼自身が願いになって
私の前をいくつも翔って(はしって)いく
小さすぎて私の願いは叶わないの
彼も小さすぎて私の願いを叶えられないの
もう彼は下りてこない
下りてきたなら私を殺す
だけど寂しがりやな彼だから
私は無言で空を見ているの
もう望まない
願いすぎて薄くなった願い
言葉にしようとしても
冬にしか色が付かないから
もう彼は下りてこない
知っているけど祈っているわ
悪戯な彼が悪戯に迷い込むように
ベランダから夜空を見つめながら
◆◆◆
12.『誰が為に鐘は鳴る』
鳩と紙吹雪と歓声が舞う街の
高い塔から降り注ぐ澄んだ音
後ろから二番目でずっと着いていった私にも
そのオコボレは美しく響いた
この旅が終わった瞬間
きっと私はただの一市民に戻るのだと思った
どこかで安心していた
崖も怒号も返り血も
全てが永遠に過去に流れて
二度と巡ってこない日々が手に入ったのだと
戦いの日々の中
皆は私を役立たずと罵る事無く
ジェラに至っては指を2本失いながら私を守ってくれた
剣先が絶えず震えていても
いつも一歩出遅れるとしても
勝利の後の炎の前で
グラスに美酒を注いでくれた
本当の英雄達よりも
私の体は奇麗だ
どうして皆は笑ってくれるのだろう
どうしてその心の裏には澱みが映らないのだろう
鐘の音に足を縛られて動けない私を見て
ジェラが何を泣いているんだと聞いた
カインが感動でもしているんだろうと茶化した
ミリアがハンカチーフで私の目元を拭い
リーガルは大きな手で私の頭をぽんぽんと叩き
よく頑張ったな、と小さく言った
逃げ出したいのに
この場所が温かくて離れられない
気持ち良さそうに揺れる鐘
心を揺する響きが苦しくて
結局私は
その場に塞ぎこみ
今までのように4人の影に隠れて声も上げず泣いた
鐘の音がたくさんの隙間を縫いながら
いつまでもいつまでも染み込んできた
◆◆◆
あとがきにかえまして。
就活の時も油断はなりません。何が舞い降りてくるか分からない。
今回のは思い入れの強い詩が多いです。その意味では、今回は大満足でした。が、いろんな意味でまだまだです。
んじゃ、二度目のリセットをして、次の言葉が生まれてくるのを待ちます、なんて言えば少しは格好イイのかなぁ?
ぐっない!!
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