忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/01/18 10:52 |
第3回 詩の発表会

昔このブログで吐いた記憶のある言葉を探してたけど、うまいこと見つかりませんでした。
…自分が言ったんじゃなくて、誰かの言葉を混同して勘違いしてるのかな?


ホントに詩というものを書かなくなりました。
過去のものを見返してみても臭いと思うし、書きたいと思える瞬間に出くわせない。
皮肉なもので、気分が落ち込んだとき(特に人間関係が上手く行ってない時)に書ける詩は(あくまで自己満足という枠の中で)強力で、調子のいいときはその嬉しさが詩に乗っていかないように思います。
昔は「書けない」状態をもう少し不安がってたように思いますが、今は別にそうでもない。出るときは出る、ってどこかで信頼してるからと、詩どころじゃないからだと思う(ホントに卒論なんて書けるのか!?)。


不安定が許されないのがプロで、停滞を許されるのがアマ。
「詩のボクシング」に出たときの感覚で言えば、評価を受ける勇気があるのがプロ。無いのがアマ。
じゃあ停滞したいけど許されたい感じはセミプロか。便利だ。

久し振りに人の顔を浮かべてブログを書いている。
もうそろそろ1年になる。

「何でこの人が好きなのか」、と説明できるサイトは5つ。


本題です。
久々詩の発表会。
今回は4本のみ。多分もう今年は詩を書かない(書いてる場合じゃない)ので、人様に見せても恥ずかしくないと思える気がするのを…と言いたい所ですが、至らないと感じるものを含めて載せます。今回解説は一番最後にまとめてます。


◆◆◆

ハイヤー・ハイヤー・ハイヤー


たくさんのチビたちを散りばめた夜に
草の凪だけが聞こえてくる
温かく大きな息で背をふるわせて
昂ぶるおまえをそっと撫でる


鞍をのせてぼくもまたがる
世界が広く 小さく変わる
体中に伝わる おまえの熱が
ぼくとゆっくり溶け合っていく


世界に呼吸を届けにいくんだ
くぐもった空気を 塗り変えに行く
動かない地下鉄の中にも 子ども部屋の隙間にも
心地良い熱が 舞い込むように


一ついななけば 沸き起こる翼
鬣(たてがみ)にしがみつき 体を預けて
ぼくを乗せた白馬 地を踏み込んで 
広野の歓声を残し 引力を切り離した


届かない星よりも それを湛える夜を愛して
その中を真っすぐに 貫いていく
加速度に負けない 強くしがみついて
もっと速く ぼくたちだって知らない陸へ


世界に呼吸を届けにいくんだ
目覚めの光を 塗り変えに行く
巣立ちを迎えた小鳥も 今日から独りの朝でも
心地良い音で 始まるように


翼が浚う ひとびとの悲鳴
もう聞こえなくなる おとなしくなる
悲しい声になんて揺さぶられない
幕をあけて もう少しで隠れるから


夜の隙間 命の静寂(しじま)に
ぼくたちだけが 翔け抜けていく
鞍の向こうで 生命の鼓動
スピードを落としながら ゆっくりと遊離(わか)れて

東から迫る 翌日(あした)と向き合えたら
朝日に翼を溶かして 静かに降りていこう
青々とした 自分勝手な
草の声がまた 聞こえてくるまで・・・


◆◆◆

砂時計


狭く締まった空から とめどなく流れる乾いた砂
降り注ぐ砂は髪に、服に、口に飛び込み
あとはだんだんと積み重なって 体を飲み込むだろう

手に持った青い傘は
優しさを見せびらかすためのもの
開いてみるけど結局は埋もれる
根本はまだ横たわっている
むしろ壊れた雨どいの下に立っているような重い音が嫌で
傘を畳んで 砂に打たれた

積み重なる砂は ざらざらと、さらさらと流れ
なだらかな坂になり、冷たく黙る
坂の中腹に傘を突き立て
その横に体を預ける
もう仕打ちに疲れた
乾いた脆坂が体を滑らせて ゆっくりと淵へと追い込む
耳には優しい砂の音
雨音は母親の中にいるときに聞こえる血流に似るのだという
だから穏やかな砂の流れにも心が休まるのだ
体を母に返すだけだ ならばきっと怖くない

やがて透き通った壁にぶつかり
行き止まりにきた砂が仕方なく被さってくる

消えていく姿
黄色に飲まれる姿

諦めたように笑えば
きっと供養にでもなるだろう

安寧な姿だと思えば
まだ心が休まるのだろう


青い傘の柄だけが顔を残し
三分間は終わった


◆◆◆

氷の猫


雨が上がった日の帰り道
見たいアニメがあったので 近道を使うことにした
その道にある倉庫の裏で 猫を拾った
透き通った体でできた 氷の猫
泥とネコジャラシの毛が張り付いてて
抱き上げるとチクチクする
顔を近付けると一声鳴いた
か細い声は隙間風のように冷たかった
かわいそうなので 家に連れて帰ることにした

裏口から家に忍び込み お風呂場で猫を洗った
水をかけると嫌がって鳴き声をあげる
泥は落ちたけど草の毛はひっついたままで
洗う前よりも一回り小さくなっていた
体を拭こうとするとタオルの毛がくっついた
剥がすためにもう一度シャワーをかけた
猫はもうちょっと小さくなった

洗面器に入れて 部屋に連れて行く
ミルクをあげてみると ちょっと匂いを嗅いでから飲み始めた
それをじっと見ていると だんだんミルクの色が薄くなっていった
逆に猫は少し白くなったようだった

猫を撫でてみると やっぱりじ~んと冷たい
でも頭や喉を撫でてあげるとうれしそうにゴロゴロっていう
かわいいからしばらく続けていたら
また猫は小さくなってしまった

猫が暑いといけないので
お母さんが帰る時間までクーラーのある応接間に連れて行った
できるだけ冷たい風が当たるように
吹き出し口の所まで猫の入った洗面器を持ち上げる
腕が疲れて猫を下ろすと
やっぱり猫は小さくなっていた

片手に乗っかるぐらいに猫が小さくなったので
冷蔵庫の氷が勝手に出てくる引き出しの中に入れた
扉を閉めた途端にさみしそうに鳴きだしたので
すぐに出してあげた
抱き上げると四角い氷が何個も猫に張り付いていた
これならいいかと洗面器に戻したら
猫は歩きにくそうに氷を舐めていた

お母さんが帰ってきた
玄関に靴が無い事を聞かれてどきっとした
転んで足が汚れたって嘘をついた
お父さんも帰ってきた
お風呂に洗面器が無い事を聞かれてどきっとした
知らないって嘘をついて部屋に帰ると
変な汗がじわじわと出てきた
猫も汗をかいて また手に乗るぐらいになっていた

お母さんがノックをしないで部屋に入ってきた
びっくりして猫を隠そうとすると
洗面器がひっくり返った
そこから猫と水が飛び出して カーペットが濡れた
わたしはお母さんに怒られた
嘘をついたことを怒られた
お父さんも部屋に入ってきて
猫を見つけてびっくりしていた
猫を飼っていいか聞くと またお母さんが怖い顔をした
家では飼えないから すぐ元の場所に戻しなさい、って怒った
でもお父さんは 一日だけならいいよ とだけ言って、部屋から出て行った
お母さんはびっくりして 慌ててついて行った
わたしは嬉しくて 猫を抱き上げて部屋をくるくる踊った
もう猫は 顔も分からないくらいに小さくなっていた

少しでも涼しくなるように 扇風機を掛けて寝た
しばらくすると 猫が布団の中に入ってきた
洗面器に戻しても すぐまた布団の中に入ろうとする
足のほうから入ってきたときは 冷たくてびっくりした
仕方ないから 猫を枕元に連れてきた
猫はうれしそうに喉を鳴らして わたしに擦り寄ってきた
ちいさいちいさい猫は わたしの鼻と同じくらいになっていた
息を吹きかけると くすぐったそうに枕を転がる
猫が頬をなめた やっぱりちょっぴり冷たかった

かわいいなあ かわいいなあ・・・・・・


朝目が覚めると お父さんとお母さんが枕元にいた
目をこすると 人差し指が濡れた
ピンクの枕カバーに まるい水のシミができていた

うれしそうに泣いてたよ とお母さんが言った
慌てて猫を探したけど もうどこにもいなかった
布団をかぶって わんわん泣いた


雨が降ると 倉庫の裏を通って帰る
でも もう二度と
氷の猫を見つけることはなかった


◆◆◆

静かに


静かに 静かに
子どもの寝息
寝かしつけてから見る顔は
薄明かりの下でも柔らかい
まだ明日の準備があるから
何とか起き出さないと
指を掴んだ小さな手の平をほどいて
眠りで寂しさを掻き消せるように・・・


静かに 静かに
鬼が来ている
ひとりで隠れたかったのに
一緒の部屋に入ってきた弟
真っ暗な部屋 前を通る足音
過ぎ去った後に つい吹き出してしまう
この扉が開けられるまでは
絶対に声を出しちゃダメ


静かに 静かに
海沿いの路
夕日は無力 汽笛も無力
幾度繰り返せど波も消される
だからきっと僕の言葉など意味が無い
だけど隣で自転車を押す
エラーをした悔しさよりも
出られなかった悔しさの方が大きいのだから


静かに 静かに
他人の幸
今ここで叫べば台無しにできる
私の前から消えた男性(ひと)
違う女性(ひと)にたどり着いた男(ひと)
幻想が欲しいんじゃない 事実がいらないだけ
もし欲望にまみれた自分が嫌なら
今までどおりそこで泣いていればいい


静かに 静かに
朱の病室
転寝(うたたね)から覚めたら
冷たい腕をしていた貴方
騒いでも駄目なら ちゃんと受け止める
どうせ見つかれば慌しくなる
朝の色が蒼に変わるまで
穏やかな時間を もう少しだけ・・・


静かに 静かに
私の命
ゆっくりと ゆっくりと
闇と溶け合う
初めての『生』を味わって
やっと初めての『死』が始まる
遺した事象は 数えられない
それでも静かに 私の命

尽きないから静かに
優しい思い出の花輪の中で

静かに 静かに


◆◆◆

かいせつ。

1.ハイヤー・ハイヤー・ハイヤー
コレを書いた時期(7月頃)は詩と音楽が切り離せないと言うか、歌詞作りを意識していたイメージが強いです。同じリズムの言葉を選ぼうとすると、文字数の制限が出てくるので、どれをはめ込もうかと考えるのは意外と楽しかったです。メロディーはありませんが。

2.砂時計
どっちが入ってると思う?

3.氷の猫
…良くないですね。
昔はホントに2段落程度の短編詩が好きだったけど、長い詩が増えてきたのはやっぱ時間の影響でしょう。長くしすぎて想像の幅を奪った嫌いがあると思います。

4.静かに
谷山浩子さんの歌のタイトルと、サビのメロディーを一小節だけ捩り、残りはリズム無視で。
色んな人の、色んな「静かに」を集めてみようと思ってできたモノです。

◆◆◆

あとがき。

今年一年で書いた他の詩の一部は過去のブログに載せてます。
これまで発表会毎に何か一つ「気に入ったな」と感じられる詩を盛り込んできました。自分の中で自信がある物を含まないとなかなか披露にまで至れないので、その意味で以下の詩には感謝しています。

一回目:「冬のすきま」
二回目:下りてこない
今回 :静かに

特に上の二つは自画自賛を越えた、本当の意味で「よく書けてくれた」詩だと思ってます。

フッ、と下りてきたキーワードから広がる詩、というのは、いくら考えて練られたモノよりも強力なんだと思います。
無欲の勝利、というと少し違いますが、何気ない、さりげない一言が素敵になるよう、精進したい…


あ~、…ま~た散漫になってきた(笑)


いい言葉を生み出せる人は、いい生き方をしていると思う。
同じことの繰り返しみたいになりますが、少しでもいい言葉を生み出せるよう、このテーマを時々思い出しながら人生やっていきたいと思う次第です。

詩がどーとか超えちゃいましたが、読んでくださった方、ここまでお付き合い下さっている方、本当にありがとうございました。

また機会があれば、お目にかかりたいと思います。では!


PR

2008/12/12 02:05 | Comments(0) | TrackBack() |

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<がっくせいさん | HOME | 奇行文>>
忍者ブログ[PR]